アイ・アール・システムの赤外コラム 第1回
ガラスNG!? 非接触温度測定用の窓って?要注意ポイントも解説 前編
1 はじめに
2 ガラスが不向きな理由とは
3 定番の赤外線透過窓とは
4 まとめ
技術情報TECHNICAL INFORMATION
ガラスNG!? 非接触温度測定用の窓って?要注意ポイントも解説 前編
1 はじめに
真空チャンバや炉内、装置内の物体の温度を
放射温度計やサーモグラフィで測定する場合
「のぞき窓」の存在が欠かせません。
しかし、一般的なのぞき窓の材料であるガラスや石英越しでは
温度測定ができないと、お困りの方も多いのではないでしょうか。
窓越しの非接触温度測定を実現するには一体どのようにすれば良いのでしょうか。
2 ガラスが不向きな理由とは
そもそも、なぜガラスや石英は温度測定に不向きなのでしょうか。
それには、非接触温度測定の原理が関係しています。
絶対零度(-273.15℃)より高い温度を持つ全ての物体は、
常にその温度と放射率によって決まるエネルギーを電磁波として放射しています。
放射温度計やサーモグラフィは、その放射エネルギーを検知することで
物体の表面温度を測定しています。
そして、その測定には主に
「波長8~14㎛(マイクロメートル)の遠赤外線」
が使用されます。
実は、多くの赤外線は大気に吸収されてしまうため
大気中の温度測定には使いにくいのですが、
8~14㎛の波長帯は例外的にこの吸収が弱いため温度測定に使用されています。
(大気の影響を受けにくい波長帯は「大気の窓」と呼ばれています)
また、常温の物体の放射エネルギーはピーク波長が約10㎛なので、8~14㎛の測定が効果的です。
(気になる方は「プランクの法則」で検索してみてください)
しかし、ガラスや石英は波長8~14㎛の遠赤外線を通さないという性質を持つため
非接触温度測定には不向きとされています。
窓越しに温度測定をするためには赤外線を通す窓を用意する必要がありますが、
それは一体どのようなものでしょうか。
※高温物体の温度測定は可視光線や近赤外線など短い波長で行えるため
特定の条件下ではガラス/石英越しの温度測定も可能です。
3 定番の赤外線透過窓とは
非接触温度測定用のぞき窓として広く使用されるのは
ゲルマニウム(Ge)窓です。
Geは、約2~23㎛の幅広い赤外線領域を透過させる材料です。
比較的頑丈で湿気や薬品にも強いため
赤外カメラ/サーモグラフィの保護窓や集光用レンズとしても使用されます。
耐圧性も高いため、真空容器にも取付可能です。
両面を研磨されたGeの透過率は約50%なので
多くの場合、ARコートで透過率を上げます。
また、屋外など窓に傷がつきやすい環境で使用する場合は
DLCコートをかけて耐久性を上げることもできます。
※ARコート…Anti Refrection、つまり反射防止コーティングのこと。
反射による光の損失を抑えることで透過率を上げる。
※DLCコート…Diamond Like Carbonコーティング。厳密にはARコートの一種。
硬い炭素のコートで傷や薬品に強くなる。
とても扱いやすく優れた窓材と言えるGeですが、常にGeが最適とは限りません。
実は、Ge窓には1つ大きい弱点があります。
4 まとめ
☆非接触温度測定には主に8~14㎛の遠赤外線が使用される
☆遠赤外線を透過しないガラスや石英の窓はNG
☆諸特性に優れたGe窓がよく選ばれる
☆Geは弱点が存在する
次回は、その弱点と対策について解説します。
→後編はこちら
関連項目
ガラスNG!? 非接触温度測定用の窓って?要注意ポイントも解説 後編
株式会社アイ・アール・システムは、赤外線を中心とした光計測機器・部品の輸入販売商社です。
半導体製造、宇宙航空開発、医学研究などの最先端の分野において、世界各国のユニークで優れた製品をご紹介しています。
専門知識を持つ技術者も在籍し、各種デモ機による測定/レンタルも行うなど、総合的なサポート体制が整っています。